「潜水服は蝶の夢を見る」THE DIVING BELL AND THE BUTTERFLY

シネカノン有楽町2丁目

ジュリアン・シュナーベル監督
2007年 フランス/アメリカ


雑誌編集長、42歳、3人の子供の父親
ある日、倒れて体の自由を失う
”閉じ込め症候群”
彼は自分に残されたものを駆使して語り始める
左目の瞬きと想像力と記憶で。

意識はあるのに体はまったく動けない、耳と左目だけが世界と繋がる。
自分だったら、と思うとパニックを起こしそうだ。
映像は彼の目を通して映し出される、潜水服を着て海に漂っていたり、蝶になり世界を羽ばたき渡り、マーロン・ブランドーになり、女性たちを愛する。
彼のイメージは明確だ。
彼は生きている。父親の子供として、息子の父親として、愛する人々に囲まれて。

ジャン=ドー役のマチュー・アマルリックは、ミステリアスで色っぽくて人をそらさない魅力があり、何しろリアリティがある。「ミュンヘン」以来注目の俳優さんだが、007の次回作では敵役を演じるとかで超期待。
父親役の名優マックス・フォン・シドー、息子との電話のシーンでは不器用だけど愛情あふれる父号泣の演技に私はバックからハンドタオルを取り出した。海岸で親子がピクニックを楽しむ場面でのまだ幼い息子の涙が胸につまされる。病室のTVでサッカーの試合を、しかも決勝シーンを見ているのに、介護士が消していってしまう時、見ている私もジョン=ドーと一緒に「NO~~~」と思わず叫んでしまう。

重苦しく残酷な運命のはずが、美しい映像とユーモアとエスプリで軽やかに仕上げている。ヤヌス・カミンスキーの撮影は本当にすばらしい。
ジャン=ドーは死の間際まで善意の人たちに見守られ、生きている幸福感にあふれている。私の人生はこんな風に終われるだろうか?不安になった・・・それはそれとして、人生は素晴しいのだ。

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